Mic Seja車遍歴

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Mic Sejaの小型高性能車シリーズ 第52弾:Panhard 24 CT(パナール24 CT)

2026.10.29

Mic Sejaの小型高性能車シリーズ 第52弾:Panhard 24 CT(パナール24 CT)

 

1、レトロモビルのパナール・オーナーズ・クラブ

旧車好きなら一度は行ってみたい、パリのクラシックカー・イベント「レトロモビル」。その出口近くで、パナール・オーナーズ・クラブが展示をしていました。

フランスでも今や希少なパナールを、オーナーたちが力を合わせ、自分たちの手で維持・保存している様子が素敵に見えました。

写真は、展示の全容と、クラブが発行した資料を並べたものです。

大量生産車とは違い、生産終了から長い年月が経過したパナールでは、部品の入手や整備にも苦労が多いはず。それでも、手作りの部品カタログなどを用意し、愛車を維持するために知恵と労力を持ち寄るオーナーたち。その熱意が伝わってきました。

クルマは、生産が終わったらそれで終わりではありません。乗り続ける人がいて、部品や整備の知識を伝える人がいて、資料を残す人がいる。そうした活動があって初めて、希少なクルマは次の世代へと受け継がれていきます。

今回は、そんなパナールの中から、端正なスタイルが印象的な24 CTを取り上げます。

2、ル・マン24時間レース

パナールと聞いて思い出すのが、ル・マン24時間レースで活躍した、あの怪鳥のようなレーシングカーです。

Ford GT40やFerrariなどの大排気量モンスターが競い合う一方で、パナール系のレーシングカーには、まるで別の競技をしているかのような独特の存在感がありました。

大馬力で押し切るのではなく、空気抵抗を徹底的に減らし、小さなエンジンの力を最大限に生かす。

いわば「究極の省エネ・高効率クラス」です。

その代表格がパナールCD。1962年のル・マンでは、CD系のマシンが性能指数部門で優勝しています。

今回取り上げる24 CTそのものがル・マンを走ったわけではありませんが、CDと市販車24シリーズには、小型エンジンの力を効率よく使おうとするパナールの設計思想が通じているように思います。

 

3、パナール歴代モデル

戦後のパナールは、Dyna Zあたりから、いかにもフランスらしい独創的なデザインを展開していきます。

Junior、Z、PL17、CD、そして24シリーズへ。

どれも個性的ですが、なかでもPL17あたりまでの造形は、フランス車らしい独特の曲線や、少々クセの強い表情が印象的です。

レース用のCDも、こうしたパナールの小型エンジン技術と、空気抵抗を減らすための設計思想につながっています。

そして登場した24シリーズ。

歴代モデルの個性を受け継ぎながら、デザインをぐっと整理し、国際的にも通用しそうな端正な姿へと変身しました。

4、パナール24 CT

前身のPL17シリーズまでは、どうも筆者の神経を逆立てるようなボディーデザインが気になっていました。

ところが24シリーズになると、印象が一変します。

世界市場を意識した時代の流れもあったのでしょうか。とにかく、こちらは「スッ」と受け入れられるデザインです。

フロント: PL17系と比べるとフランス車独特のクセが薄れ、すっきりと整理された造形。独特の個性は残しながら、ずいぶんモダンに見えます。

サイド: 端正な側面。クーペらしい伸びやかさがあり、全体のプロポーションもきれいにまとまっています。

リア: こちらもすっきりとした造形。前後を通して、デザインの統一感が感じられます。

ドア類を全開: ドアや各部の開閉状態を見ると、外観だけでは分からない車体の構成や造りも楽しめます。

インパネ回り: 立派で、意外なほどオーソドックス。奇抜な外観から想像するよりも、ずっと普通の乗用車らしい雰囲気です。

エンジンは850ccの空冷水平対向2気筒

エンジンは848ccの空冷水平対向2気筒。前輪を駆動するFF方式です。

2気筒というと簡素なエンジンを想像しがちですが、パナールは昔からこの小型エンジンを磨き上げてきたメーカー。24 CTでは、仕様によって最高出力50PS(DIN)級、SAE表示では60PSという数値が見られます。

5、お洒落満載の室内・外装ディテール

写真左上から順に見ていきます。

① 凝ったシートアジャスターレバー
座席の調整機構にまで気を配った、フランス車らしい細工です。

② お洒落な室内ランプ類
実用部品にも、単なる機能だけではないデザイン上の配慮が感じられます。

③ すっきりしたリアシート
後席を起こすと荷物置き場として使える構造。限られた室内空間を有効に活用しています。

④ 軽そうなアルミ製ホイールキャップと薄いディスクホイールのリム
足回りにも、軽量化を意識した雰囲気が漂います。

⑤ 空冷水平対向2気筒エンジン
同じ空冷水平対向2気筒という形式は、シトロエン2CVにも通じます。ただし、設計や性能はそれぞれ異なります。

⑥ リアバンパー下に収容されるスペアタイヤ
レバーを操作してロックを解除する方式。スペアタイヤの収納場所にも、パナールらしい工夫があります。

⑦ エンジンオイルフィラー
日本車なら武骨なねじ蓋で済ませそうな部分ですが、こちらはスプリングを引っ掛けて固定する凝った構造。こういう細部にまで目が行ってしまうのが、旧車観察の面白いところです。

性能だけでなく、こうした細かな造りにまで目を向けると、24 CTが単なる小型クーペではなく、小排気量の高級・高性能車と言う設計者のこだわりが詰まった一台であることが分かります。

 

5、800cc級対決――ヨタハチ、ホンダS800、パナール24 CT

800cc級のスポーツカーと聞けば、まず思い浮かぶのがトヨタ・スポーツ800、通称「ヨタハチ」と、ホンダS800の対決です。

そこに、少し排気量の大きい848ccのパナール24 CTを加えてみましょう。

3台とも小排気量エンジンを搭載していますが、設計思想はかなり違います。

ヨタハチは軽量な車体と空力性能、ホンダS800は高回転型エンジンの出力、そしてパナール24 CTは空冷2気筒エンジンと、空力を意識した車体設計が持ち味です。

3車の比較

エンジン出力ではホンダS800が圧倒的に有利。パナール24 CTはその中間で、ヨタハチよりは高出力です。

ところが最高速度となると、3台は意外なほど近いところに並びます。

大きい。車重もかなり重い。それなのに、最高速度はほぼ同等なのです。

もちろん、最高速度は空気抵抗だけで決まるわけではありません。エンジン出力、変速比、タイヤ、計測条件なども影響します。

それでも、この比較からは、パナールが小さなエンジンの力を効率よく使うことに長けていた様子がうかがえます。

小さなエンジンでも、車体の設計次第でここまで走れる。

これこそ、小型高性能車を眺める楽しさではないでしょうか。

6、考察

パナール24 CT。端正なクーペの姿と、空冷2気筒の小さなエンジン。その背景には、独自の技術を磨いてきたメーカーの歴史と、希少なクルマを今も大切に維持するオーナーたちの情熱があります。

レトロモビルで出会ったクラブの展示を思い返しながら、そんなパナールの魅力をあらためて感じました。

<本稿完>