Mic Seja車遍歴

Mic Seja Car history

Mic Sejaの小型高性能車シリーズ第32弾:ホンダN600 2023-03-05公開版

2023.5.10

Mic Sejaの小型高性能車シリーズ第32弾:ホンダN600

<N360の衝撃>

1967年、ホンダN360新発売!早速試乗させてもらって大衝撃!当時筆者の身近な軽自動車のイメージはスバル360とかマツダのキャロル。20馬力前後のエンジンで全長3mの四人乗りのボデーを引っ張る。正直遅かった!そんな常識を持ってのN360試乗。いやとにかくビックリ!何せエンジンは他のモデルの1.5倍の馬力、重さはほとんど変わらないのだからビックリするくらいに早かった。初代ミニをまねたというレイアウトそのものも突出したものだったのでしょう。

当時ホンダは二輪車メーカーから四輪車メーカーにステップアップを狙ってS5/600から始まりT360とかN700とか他にはないモデルを次々と!F1参戦なども合わせ「大いに期待されるメーカーでした(今でも)」。

 

でも販売店の体制は弱く自転車屋さんがやっとバイク屋さんに育ったばかり、四輪対応ではサービス機能は販売店には期待せず、ホンダ直営のホンダSF(サービス・ファクトリーの略と聞いていた)が担当してました。市場での品質情報をホンダSFで直接把握して迅速に対策する。当時のホンダは「設変だらけ」でも有名でしたね。

サービス体制も二輪ベースなら「車つくり」も二輪的。前に積まれるエンジンはホンダのCBそっくりの外観!(事実CB450のエンジンをベースに設計されたらしい)・・・・・写真左上、後からツインキャブ仕様も追加されました。

 

トランスミッションも二輪風のコンスタント・メッシュのドグクラッチ。シフトレバーはダッシュから生えていて、コツン・コツンと若干のショックを伴いながらもスカッ!と入るし、エンジン回転を合わせればシフトダウンも気持ちよく。当時は普通乗用車も「フルシンクロ」がカタログに堂々と歌っていたくらい。それも技術が未熟でちょっと無理するとシンクロが負けて「ガリッ」、それが当たり前だったからN360のシフトが物凄くスポーティに感じられたものです。・・・・・写真右上

 

ついでにヒーターは強制空冷のエンジン冷却気を直接取り込むといったイディア。・・・・・写真右下

 

もっと面白く感じたのはトランクリッド。これが樹脂製だったんですよ。・・・・・写真左下

 

本田さんは「スーパーカブ」の技術でN360をつくったんですね、きっと!

 

他社の20馬力の軽自動車モデルは、中速でコーナーを曲がると走行抵抗に負けて速度が落ちてしまったものですが、N360は同じコーナーに突っ込みアクセルをオンにした途端に加速!ボデーの上物の重量が一挙にコーナー外側によって「アッ・ト・ト」もちろん 転倒なんて言うことにはならなかったんだけど、これまたスポーティの印象を倍増!

 

N360と言うよりよくできたFFのせいだと思うのですが、雪路面に強いのも印象的でした。雪の夜などに走っている除雪作業が入り「ちょっと脇に避けて」なんて指示があって除雪の済んでいない脇道に誘導されたりしていたんですが、そのへんのFRだと戻ってこれない。前輪の雪抵抗に後輪の駆動力が負けて空回り。ところがN360だと全輪がしっかりと回って雪を超えて後退してくれる。本格FF初経験には印象的でした。蛇足ですがミニ・クーパーの大活躍したモンテ・カルロ・ラリーの積雪峠道では「速さ」の競争ではなく。「雪道を登れるか?」の勝負だったそうです。

当時はどこのメーカーも変形モデルをつくって台数稼ぎに躍起でしたがホンダN360も同じ。バン型(LN360)、クーペ(Z)、更に手が入った格好でTN360、バモスホンダと拡張していきました。

 

TN360にもお世話になりました。でもフロントの衝突強度は「Hマークの鉄板一枚のみ」、ゆめゆめぶつけてはいけないと心して運転したものです。農道のNSX!の前身ですね。

<N600>

流石に360ccでは心もとなかったせいか輸出車両にはN400とかN600が作られ、日本国内でもN600が売り出されました。エンジンが1.7倍になったので早いのは当たり前ですが、なんといってもトルクが1.73倍!

 

当時当たり前だった2サイクルのスバル360や鈴木・フロンテ、ダイハツ・フェロー、三菱・ミニカでは若干エンジンの回転を挙げてクラッチをつなぐのが当たり前でした。(エンジンで爆発後の排ガスの掃気が弱くトルクが出ない現象)。その癖が抜けないのか4サイクルのN360でもチョイっと回転を挙げて発進したものですが、N600はアイドリングからドカンとトルクが出ているので数ランク上級の車に感じられました。

 

それに加えて足回りもーまるでボデーの重心が下がってどっしりとした印象。排気量アップに従ってか、または欧米の道路事情に合わせるためか、足回りは強化されていたのかも知れません。N360ではなんとなくコーナー外側にクオーターパネルあたりが斜め上に引っ張られるような腰高な印象だったのに、N600ではコーナリングの荷重が四つのタイヤに乗っかって、ちょっと言い過ぎだけどゴーカートと言おうか初代ミニのような安定した感じが印象的でした。「小さな高性能車」ですね、実際!

 

多分N600が理想の「エヌコロ」だったと思います。でも小型枠(値段と税金)のハンディを考えればN360で十分という事で国内販売は微々たるものだったようです。

 

下の写真はナッシュビルのレーン・モーター・ミュージアムで見かけた個体です。N600E ATとありました。北米向けには追加コーナー・ポジションランプとか、バンパーコーナーが追加されていたと聞いていましたがこの個体はあっさりとした顔つきでした。

<本稿完>