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Mic Sejaの小型高性能車シリーズ臨時第2弾:Porsche356A 1600Super 2021-12-02公開版

2021.12.2

Mic Sejaの小型高性能車シリーズ臨時第2弾:Porsche356A 1600Super

1,50/60年代車の共通イメージ

<ファースト・エンカウンター>

岩田さんからキーを受け取って、最初の仕事は燃料給油。

岩田さんが説明しながら給油して下さったので何とかなりましたが、フロントのボンネットを開けて給油するのは「一つの儀式」。

904もそうですが、当時のポルシェはカウルトップ部に燃料タンクがあり、フードを開けた後、おもむろに給油キャップを外して給油する仕組みになっていました。904などはガソリン残量によって操縦性が変化したそうです。

現代の車はガソリンポンプのインレットがアクセスしやすい様にクオーターパネル付近に給油口がつけられていて便利そのものですが、50/60年代の車は、設計者が「給油できるようには設計してあるので、車に合った給油方法に従え」と主張しているような!感じです。

<1950年代60年代の旧車共通イメージ>

50/60年代の車は、ウエーバー付きのなど神経質な儀式が必要な車が多いので、緊張してイグニッション・スィッチを捻りエンジン始動。6V仕様ながらセルモーターもしっかりと回り、あっさりと「ビタミン剤を飲んだビートル」エンジン音を立て始めました。

まずはギアを一速にシフトし走り出す。比較的遊びの多いギアレバーをきちんとあるべき一側の位置にシフトしてやると「スルリ」とエンゲージしてくれる。

二速へのシフトアップしかり。シフトレバーだけでなく、クラッチ・アクセルペダルも同じように「設計者様が意図した手順」に従い動かすと実に「普通に」走ってくれる。

空冷ビートルを思い出しながら走り始めて、「50/60年代車の共通なイメージ」を思い出しました。「チョイ乗り」ではなくじっくりと味わった50/60年代車達を思い出しますと、代表選手としてはスバル360・トヨタスポーツ800・フェアレディSP・ロータスエランくらいかしら?アルファジュリアも居ました。

それらに共通するイメージ、それは「設計者の意図に従う運転」ではないかと思い至りました。

     

レーダークルーズなどがよい例ですが、現代の車はドライバーの意思を先取りして反応してしまうように50年ほどの自動車メーカーの四苦八苦の努力の結果、躾けられてしまっていますが、当時の車は設計者の意図を理解しないと直ぐにギア鳴りしたり・ジャダーを起こしたり。極端な場合には動いてくれない!

もちろん生産国毎に「癖」は明確にあるようです。

 

<ドイツ車>

アウトバーンの高速走行が当たり前だったためか、設計者は相当に幅を仕込んであり、それ幅の中で操作している限りは実に気持ちよく走ってくれます。

 

<英国車>

設計者の意図の幅は狭く、紳士として磨いた技術を要求する。狭いカントリーロードが主体のせいか、運転はまさにスポーツ。ステアリングも遊びを嫌う感じです。英国紳士にとってはスポーツカーの運転は乗馬と一緒なのかもしれませんね!

 

<イタ車>

設計者は芸術家!運転する側も芸術的才能がないとうまく操作を受け入れてもらえない。アルファのトランスミッションの後退に入らないこと!ちょっと申し訳ないけれど、芸術を身に着けていない筆者の腕では「ガツッ」と鳴らさないとシフトできませんでした。

 

<日本車>

50/60年代の日本の自動車メーカーの設計者は「しっかりとした設計者」ではあるが「味」とか「フィーリング」とかの領域は暗中模索。でも最終的には丈夫で長持ち!

2,ロードインプレッション

<試乗車>

たぶん1959年製の356A、ロイター製のキャブリオレ1600スーパー・カルマン製ハードトップ・サンルーフ付きということになるのでしょう。岩田さんが手塩にかけた車だけに欧米のオークションに出しても目立つほどのミントコンディション。

ツイン・トリップとストップウオッチのラリー装備が決まっています。

<ブレーキ>

試乗させてもらった356Aはまだドラムブレーキ!現代の車では当たり前の「ブレーキを踏めばまっすぐ止まる」が備わっていない。ましてABSやベクトリングなど影も形もありません。

運転歴の古い筆者は「ブレーキは片効きする」のが当たり前で育った世代。急ブレーキを踏みつつ、片効きを抑え、ブレーキロックを防ぐ、意識もせずにこなしていますが、現代の車しか知らない人から見れば「危険な車」と感じられるでしょう!

でもドラムブレーキとは言え、たっぷりとったブレーキキャパシティーで安心感あるドライブが可能です。

<エンジン>

サーキットなどでF1を思わせる甲高い音を立てて走っているビートルとかポルシェを見かけます。メタルの品質が上がり軽量ピストンやクランクのおかげで9000rpm以上回るように仕立てているらしいのですが、試乗車は「ビタミン剤を飲んだビートル」を思わせる低速から中速が美味しい雰囲気です。普段も寄ったりと走っていたつもりですが、356Aに乗って「ゆったりというのはこんなものか!」と再確認させてもらえました。

<操安性>

試しに急坂の下りで(後輪荷重が減少した状態)でコーナリングすると「お尻がムズムズ」するか気配を感じますが、とても「エイヤー」と試す勇気はありませんでした。

岩田さんの好みでステアリングの遊びをたっぷりとってあるので、急ハンドルにも寛容な性格になっているようですが、筆者の運転(ステアリング操作の仕方)だとソウイングで切り込見すぎてしまうだろう不安を感じました。(一方向に切り込むと、遊びの部分があって、それを過ぎると一挙にステアリングが効いてくる。遊びの部分では入力に対して反応がないので余計に力を入れてしまい、ステアリングが効き出すとともに切り込みすぎてしまう。)

この辺は好みの問題だと思いますが、ステアリングに急な入力を与えない様にジワッと切り込みたい筆者ではうまく扱えませんでした。

3,独り言

ビートルをベースに熟成した356、フォードとトライアンフの部品を寄せ集めたエラン、パブリカベースだけど専用部品も多いヨタハチ。職人技を集めたジュリア。やっぱり356Aが一番工業製品でした。運転していての信頼感・安心感が別次元でした。

<本稿完>